代表野口_黒バック 「今週の一言(いちげん)」第12話売上がよくて、利益が出ているのに、資金繰りが大変になる原因の一つに、計画しない借入があります。

「確かに売上は伸びているよ。だけど、計画してこの売上になったわけではないんだ。資金があったから、なにか事業をしなきゃと思ったんだよね。利益はでている。

なのに経理は、お金がないから事業は止めろというんだ。どうなっているんだ!」

 

介護施設の運営をするM社長さんから突然に連絡が入りました。

旧知の社長さんではありましたが、いったい何がおこったのか全く不明。

今回はノグチさんの名前しか思い浮かばなかった、だからお願い!引き受けて!と

 

売上規模は30億。利益も出ています。店舗数は39。社員は700人

この会社の経理担当者が5名から「退職願」が一斉に出されたのです。

なんと経理担当者は全員で社長さんに「資金繰りが悪いのはあなたのせい!」と

 

M社長さんのグループは5年ほど前から急拡大してきました。

余剰資金ができてしまったのです。

手元に3億円もの資金があって、何か事業をしなきゃ、と考えました。

これからは高齢化社会、じゃー、介護事業だ!と人の採用、出店に邁進してきました。

 

余剰資金の名前は、震災枠融資です。

平成23年東日本大震災の被害を受けた企業に向けて、低利の貸出です。

この融資、当時から本当に倒れそうな企業には資金が届かず、発展性のある企業に融資が行われていると評判でした。

取引銀行から御社なら大丈夫!借りて欲しいと強い要請がありました。

 

もう一つグループの余剰金が借入金で膨らんだ要因は、財務部長の採用です。

規模の拡大に伴い、銀行との窓口にしっかりとした人材がほしい。

大手銀行から有能な人材を引き抜き、財務部長に就任してもらいました。

財務部長は、新規に必要な資金借入をどんどん実行していきました。

 

社長は、長年勤務している経理担当者を信頼していました。

取締役にもなってもらい、通帳を預け、日々の資金繰りをも任せました。

 

経理担当者の方は、どんどん減っていく預金通帳を見て不安です。

財務部長にこれでいいのかと問うても、彼の役目は借入のみ。資金繰りは範囲外。

会計事務所に問うても、早く試算表を作りなさい。と叱責されるだけ。

とうとう、経理部門全員を引き連れ、資金繰り表を持って社長さんに直談判です。

 

ただ、経理担当者は、会計ソフトから資金繰り表をプリントができても、原因を説明できず、社長が無駄な投資をするから、お金がなくなっていると言い張ったのです。

急に間違っているといわれた社長さんは、なんで預金通帳まで渡して、役員にまでして不満を言われるのかと、逆に不信を感じ「社長の方針に従えないならやめてもいいよ。」と答えしまったのです。

 

計画しない借入が資金繰りを悪くするのは、資金の流れと返済計画が合わないからです

介護施設の開業にかかる費用は、店舗の改装費、敷金礼金開店までの賃料、新規の人材採用教育費などです。ほしい借入は、設備投資資金つまり長期借入金で対応すべきです。

財務部長が実行した借入は、短期5年の運転資金借入です。ここが不一致です。

 

設備投資を行っても、それが、売上・利益にすぐ結びつくものではありません

採算が合い利益をだせるようになって、初めて設備資金の償却ができます。

しかし、銀行は利益が出るまで返済を待ってはくれません。

だからこそ設備投資資金は充分余裕のある長期計画が必要です。

 

財務部長は、事業計画を全く作成しませんでした。

銀行の担当者を呼んで、借入したいといえば、すぐに億単位の融資されたからです。

事業が介護ですから、お国から間違いなく入金される、銀行はここを見ています。

 

しかし、年に10店舗の出店をすすめていくなかで、すべてが、思い通りの勝ちパターンになっていないことも、うすうす気づいていました。

通帳に残高がないと、経理の担当者から詰め寄られることがあったかです。

 

一店舗ではうまくいったのに、多店舗化で失敗は、よく聞く話です。

業績が伸びている、売上が伸びている会社に資金を貸したい、銀行から見れば間違いなく返済できる取引先を増やしたいのです。

うまくいっている事業を繰りかしてもらえば、取引量が増え、利益も増大です。

 

ですが、銀行とのつきあい方は、まず自社で事業計画を練り上げてから、が大事です。

故松下幸之助さんの言葉が教えてくれます。

「銀行は雨の日に傘を取り上げ、晴れの日に傘を貸す」

 

新しい事業をしませんか?事業計画がありませんか?御社には貸出しますよ!

優秀な銀行員は、よく声をかけてきます。言われた社長さんも悪い気はしません。

銀行という威力のある組織から業績がいいと認められたわけですから。

ほしい利益計画・事業計画を立てた上で、充分に返済できる期間を設定して、それに応じてくれる金融機関と真剣に向き合う、経営者の姿勢がなにより大事です。