代表野口_黒バック 「今週の一言(いちげん)」第64話社長が一番大事にしているものを伝える、たった一つの方法

5月11日

 

え、すいません。それは集計したことなかったです。

エクセルに名前があるのは、回収漏れを防ぐため。集計は、月の売上金額を集計するためで、個別のお客様の年間集計はしていません。

社長が今月5件増えたと嬉しそうに、言ってもあんまり従業員に感激がないのは、なぜそれが大事かわからないからですね。

ウチの商品は、一度契約すれば、継続して仕事が続くから、一回の金額は小さいけれど、通年ではそれなりの金額になります。中には20年も契約が続いているお客様もあります。」

 

担当者を変えてくれと、お客様からクレームがはいりました。

「お客様を大切に」をモットーとして、業務の手順もマニュアルを作成し、業務を推進してきたのに、残念だ、いい従業員なのに、と社長は困惑顔です。

 

さて、かの従業員は、きちんと業務をしているのにと、こちらも不満顔です。

作業時間、業務報告書、マニュアルに書かれて事項はしっかり埋まっています。

すべき基本のサービス業務はきちんと出来ているようです。

一日のすべき仕事は責任持って行っていますし、所定の時間内に終えています。

 

確かに、業務に支障は無いように見えるのに、なにかお客様を大事にしているように思えない、おざなりの仕事ぶりだと感じる事もありますが、これと言った不良行動は無いから、叱る原因はみえません。

 

社長は、人を使うには時間がかかる、ガマンが大事と自分に言い聞かせています。

 

嬉しいことに、この数ヶ月 お客様は、毎月5~6件ずつ増えていきます。

かの社員からは、新規顧客契約の話が全くでません。

お客が増えたよ。と話をしても、良かったですね。というだけで、どこの伝手ですか?と聞くこともなければ、うらやましそうな素振りもなしだというのです。

 

社長は、従業員評価の大事な基準に、新規契約を据えています。

新たな契約が取れる事は、業務の内容を十分に理解して、お客様にもアピールできていることの証明です。

ただ、無理な獲得競争にいたって、その後のサービスが不十分ではいけない、そう考え、目標となる数字はあえて設定していませんでした。

 

販売が上手な人と、販売が苦手な人がいます。

 

販売が上手なひとは、

1.販売する方法を知っていて、

2.買ってくれる人=お客様を見つけだして、

3.販売方方を実践できます。

 

ところが、販売が苦手な人は、

1.販売する方法は学習します、知っています。

2.買わない人にむけて、無理やり販売マニュアルを実施します。

3.結果、相手を怒らせてしまい、もう二度と販売はこりごりだとあきらめます。

 

販売が苦手とは、そもそも「買ってくれる見込み客」が分からないから、販売マニュアルを作っても成果が出ないのです。

 

買ってくれる人は、過去から学ぶ。

当社の新規契約は、既存顧客からの紹介が多いと分かりました。

しかも、当社の商品を永らくご愛顧いただいている既存優良顧客からの紹介は、成約に繋がるケースが、とても多いのです。

 

そこで、社長さんに2つの数字を尋ねました。

1.紹介者の成約に結びついた既存顧客の年間購入金額

2.紹介者の成約に結びついた既存顧客の契約から今期までの通算購入金額

 

経理担当の社員が呼ばれ、社長さんが数字を尋ねたのですが、担当者もすぐには答えられません。

冒頭の返答は、経理担当者の言葉です。

 

具体的な数字が、社員の頭の中にお客様をハッキリ認識させます。

 

良く紹介してくれるお客様は、毎月は5千円だけど、通年では6万円、20年間ご契約いただいているので、120万円のお客様だ。

 

120万円も購入してくれているお客様だと分かれば、入社したての新入社員であっても

「ハハハー、お客様」と敬意を表したくなるものです。

 

永年契約を続けて下さるお客様を、社長がどれほど大切だと心から思っていても、具体的にどんなお客様か、が社員に分からなければ、社長の気持ちは伝わりません。

社員に社長の思いが伝わっていないのに、どうしてお客様に伝わるでしょう。

 

当社の優良顧客は、当初契約から今までいくら会社に利益をくれている人で、それは数十人もいる。

さらに、その予備軍は、これだけの購入金額がある人達で、このランクも数百人いるよ。新たに契約したお客様は今年何件で業務報告書に若葉マークをつけたよ。

そう伝えれば、新入社員でも、お客様を知る事ができます。

 

お客様の数字を知らなければ、古くからの客だと言うだけで監視するように自分を見ているお客様は、従業員にとって「オレの仕事の邪魔する面倒なジジ&ババ」でしか無くなります。

 

優良顧客とはどんな人か、自分の金銭感覚で具体的に感じられる数字で分からないと、

お客様のありがたさもわからない、自社のすばらしさも感じることは出来ないのです。

 

社長は、自分で計算出来るし、経験値もありますが、ほとんどの従業員にはその経験がありません。けれど、経験を補填する情報を与えれば、従業員でも経験を積んだ人と同じように対応できます。

従業員に渡す情報は、「お客様との関係を深める」情報です。

 

社長が大事にしている「お客様との関係を深める」情報は、具体的には、年間取引金額であったり、紹介の人数であったり、契約期間であったりします。

 

決算書や試算表に集計されて出てくる数字ではありません。

社員が具体的に分かる数字とは、現場で従業員が数えられる、計算出来る数字です。

現場で数えている数字だから、従業員の頭を占領することが出来ます。

 

社長が伝えたい想いはなんでしょうか?

全社員の頭にしっかり刷り込まれる「優良顧客の数字」こそが、社長の思いを伝える、数字です。