代表野口_黒バック 「今週の一言(いちげん)」第55話銀行のおすすめ物件で、儲かったためしがない。

3月9日

 

銀行は優秀な人たちの集まりだよ、本当に一生懸命だし、時間を守り、書類のやり直しにもイヤな顔色一つしないし。ただね、そのときは 薦められて、いい物件だと思ったんだけど、儲かったことないね。

自己責任と言えば、確かに。

ただ、普通の営業マンと違って、こっちが崇めてしまっているのかな、銀行を。」

 

A社長さんの机の上には「これからの資産運用セミナー」というチラシが。

知人の若い経営者から、「銀行に相続の相談をしています、関連会社を閉鎖しようと思っています。」と聞き、不安に思ったと話し始めました。

 

知人の若い経営者の経営する会社は、業績が伸びています。

3代目として、営業の先頭に立って売上拡大を進めてきました。

入社したときから、先代父親側で営業戦略・価格戦略を学んできました。

 

その先代父親が、ある日突然の病気。

仕事を引きついでおり、通常業務「営業」「製造」は、滞りなくすすんでいます。

業界自体が好況であることが、会社の好業績のもとではありますが、価格交渉の力を父親から学んだことも会社の大きな力と若い経営者は、自信を深めています。

 

しかし、いままで大きな投資・資金繰りは経験がありません。

税金対策などこれからは自分の仕事と思った矢先、親類から、父親が生きている内に早く相続対策しないといけないのでは?と声が出て、急に不安と焦りでいっぱいになりました。

 

ともかく、どこかに相談しなきゃ。

信頼するA社長が、銀行の信託に相談したと話したのを思い出し、すぐさま銀行に相談に行きました。

 

銀行担当者に親切に相談に応じてもらい、書類も提出してこれで一安心です。

 

さて、対策についての面談の日です。

一つ目の提案が「関連会社の清算」です。

銀行担当者から、開口一番に立石に水の説明を受け、

「そうなのか!それをしなければいけないんだ!」

 

A社長さんは、「若い経営者の話を聞いて、頼まれて紹介はしたけれど、このままでは、親切ではない。先輩として銀行とのつきあい方まで教えないと、いけない。」

そう思いました。

 

そこで、自分の失敗談を話し出しました。

 

「今まで長いこと社長をしてきたけれど、その間銀行からは、いろいろな物件を紹介されてね。特に支店長さん直々となると、本当にウチもそろそろ評価されてきたな なんて思って、ワクワクして話を聞いたんだ。」

 

「いいところばっかりだったよ、ゴルフ場も、不動産も。名前も知っているだろう。でも、今の評価はどうかな?銀行のおすすめ物件で、儲かったためしがない。

銀行の人は、みな優秀で態度もいいし、こちらの話も丁寧に聞いてくれる。

だけどこの人達は、銀行の利益のために働く本当に忠誠心あふれる人達なんだ。

つまり、いい貸出先探しが本業。僕は、結局いい貸出先になってしまったと言うわけだ。」

 

商売の基本は、

「資金を集めて」→「投資をして」→「回収=利潤+元手の資金」

最初の難関は資金集め、資金を集めるのは、大変です。

 

なぜなら、資金を持っている人は、損したくない。投資しても儲かることが確定していない案件にお金を出したくはないのです。

出資者にお金を出しても大丈夫と思ってもらえるビジネスプランがあって、

しかもやり遂げる人材だと評価いただいて初めてお金は出てきます。

 

だから「経営者」より「株主」の力が強い訳です。

 

ところが、銀行から資金が出るとなると、出資者への説明は不要。

難なく「投資して儲かる」と思い込んでしまうのです。

 

加えて、「利潤」という本来資金回収してからでないと得られないご褒美が、回収を待たずに「優良な資産を所有する幸福感」に変わってしまうのです。

「利潤」が得られなくても「まー、いいや。いい物件を持っているから。」と

 

事業承継の視点から商売の図式を書き直しします。

「相続税の支払額」→「投資先=自社の株式を買って」→「給与も退職金も配当も」

 

出資して投資し回収できるかどうか自社の「棚卸し」をしてみることです。

 

利潤は得たい、でも投資資金は出したくない。

とお考えなのであれば、それは、自社を儲ける会社に出来ないと、最初から白旗を上げているようなもの、社員だって逃げていきます。

 

銀行は智恵と資金を持っている重要な相談相手の一人だとA社長は言います。

経営者が、相談すべき相手は信頼できるコンサルタント・税理士・先輩経営者。

相談する、けれど他人の意見は、参考意見です。

自分の事業の根幹、譲れない方針と照らして、判断するしかないのです。

 

「価格交渉には強気で向かい合えるのに、「財務は知らない」という自分の不安材料があると、焦ってしまいました。

でも、他人の意見は大事です。客観ですからね。基本は会社の存続ですからそこに視点を置いて進みます。」若い経営者のしっかりとした返答が帰ってきました。

 

自分が関与していないと考えてしまった関連会社も、実は設立時に父親から「将来の二人のノウハウを生かす事業をここで行おう」と言われて始めた会社です。

父親の「ノウハウ」が資金となって残っていました。

 

活用する方法を、銀行も含めた相談相手から得ていくそれが何より大事です。