代表野口_黒バック 「今週の一言(いちげん)」第80話二代目が、先代社長を超越するタダ1つの方法

 

8月31日2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オレは日中は居ないの。居ると銀行やら取引先やら、工場長まで自分で考えないで聞きに来る。だから、お不動尊にお参りに行くんだよ。信心深いよ。毎月お参りしている。携帯、運転中は切っているでしょう。

オレに繋がらなければ、自分の頭で考えるんだよ。現場を見れば、答えは出てくる。

息子にも言っているんだよ、オレを超えるには、工場へ行ってこいと。」

 

永年社長業をつとめられ、そろそろご子息に委譲しようと考えた社長さんの話です。

会社経営は取引先も安定しており、資金も潤沢です。

会社には、社長の下で仕事を学んできた幹部社員が6名、主要ポストを担っています。

 

優秀なご子息を、後継者に据えようと、社長や幹部の側に置いて、重要事項を伝えています。

その子息が、社長の不在の時に、ふと暗い表情になりました

 

会議の後、駅までの車中「気になることがあるの?」と声をかけました。

 

「ノグチ先生だから話しますが、ボクには工場を見ても答えなんか分かりませんよ。

社長は、見てれば分かる。と言うけれど、何が答えなんだか。

なにが重要な仕事で、なにが無駄な仕事だなんて、一生懸命仕事している従業員がしていることは、全部重要だと思えてくる。」

 

永年の仕事の中で、優れた経営者のお話しを伺っていると、「あっ、それはこっちがイイね。」と「」と呼ばれる瞬時の判断を下す場面に出会う事があります。

本当に、素早くしかも確かな自信で裏付けられた言葉です。

 

若い後継者から見えれば、先代社長は雲の上の人のように思えたりするものです。

 

黙っていては分からないと勇気を振り絞って、社長に「なぜ、この人ですか?」「なぜ、この商品ですか?」と何度か質問をしました。

 

しかし、「それは後から調べれば分かることだ。分からないのは、君だけだろう。みんなにはもっと重要な議事があるのだから」と社長からたしなめられ、次第に発言は控えるようになっていきました。

 

実は、私も同じような経験があります。

会計事務所に入所したてのころ、先輩に連れられて、顧問先の会社に伺います。

出された帳簿、資料の数字、どれがどう結びつくのか、自分がそこでどんな仕事をすべきなのかが全く皆目検討がつかない。

 

上司は、資格を持つ人ではありませんでしたが、頭がいい人でした。

お客様に、問題点を指摘し、会話し、ミーティングが進んでゆきます。

その間私は、ただ、メモを取り、板書するだけでした。

 

税理士試験の簿記や財務諸表の試験に合格したと言っても、何の力もないと、たった一回のお客様訪問で証明されたのです。

悔しいのと、お客様から出来ない担当だと思われているだろうと思う恥ずかしさでいっぱいになった当時が思い返されました。

 

私は社長のご子息に問題の解決法を伝授しました。

「判断が出来るようになるには、10000時間の経験を積めばよい」

 

能力の差ではなく、脳の連想ネットワークが繋がる連合学習・経験時間の積み重ねがまだ10000時間になっていないだけ、なのです。

 

最新の脳科学は、大変嬉しい研究をたくさんしています。

いったい何が、経営の成功の原則なのか。

高度な知性を持つ人が、より長時間考えたら成功するのか?

 

みなさんお気付きですよね。

東大出身者や京大出身者に、学者や高級官僚は多くても、儲かる社長さんは少ない。

お金儲けは、知能指数で決まるモノではない、らしいのです。

 

専門家の「勘」の正体は、「潜在的知識」そのものだ、と脳科学は教えてくれました。

優れた経営者は、お客様や取引先従業員とコミュニケーションをとり、消費の動向、市況判断、人材情報など、10000時間以上の経験で、的確な「判断」を下します

 

ノーベル経済学賞を受賞したカーネマン教授が、意志決定モデルとした科学です。

 

「小さな会社★儲けのルール」を書かれた竹田陽一先生は、著書の中で、この時間を利用した「弱者の時間戦略」を説かれています。

 

例えば、ホンダの本田聡一郎は、年5500時間を35年間続けたと書かれています。

日本電産の永守さんも、一風堂の河原社長も、みな長時間労働の人たちです。

このお話の社長さんも、50年間、自分の仕事のことばかりに時間を費やしていました。

 

但し、やらされている長時間労働ではなく、自分の商品・自分の売り方を考える長時間労働です。

 

あなたは、一日に、一つの売上のことを本当に考えて考えて考え抜ける時間を、何時間持っていますか?

私の場合、一日7時間中、一つのことに集中できる時間は、せいぜい3時間です。

 

人並みな働き方をすれば、週休2日の現在の勤務形態では、年間労働日数214日で、157ヶ月。

 

15年7ヶ月=10000時間÷3時間÷214/

 

「社長に近づくには、専務から言われたとおりですね。『汗水ぷったらして考え抜け』と。15年も社員が待ってくれるわけはないのです。でも、土日もぶち込んだら、奥さんがね~。ま~仕方ないですね。たのんでみますよ」(笑)

 

長時間労働の是非が問われています。

働き方改革が叫ばれています。

残念ながら、経営者の働き方は、サラリーマンと違います。

 

サラリーマン時代と同じ事をしていたのでは、環境の変化に敗れるかもしれません。

いまや、世界がライバルです。

 

しかし、若い経営者には、大きな助けがあります。

大きな助けは、先輩経営者です。

自分の判断を「聞いてもらう」事ができます。

 

「創業社長の驚異的な商品へのこだわり×時間の投入」をそのまま引き継ぐのではありません。

若い後継者には、「若い後継者自身の商品へのこだわり×若いから出来る長時間の集中力投入」そして大きな財産【先代の智恵】があります。