代表野口_黒バック 「今週の一言(いちげん)」第4話儲けを出すには手順が大事。

「駄もの、っていってもね本当にだらだら造っちゃ駄ものにもならないんだ。駄ものっていうのは汎用品だから、逆に一定の水準が必要ってわけよ。必要な基準が過不足なしにクリアできている部品にするには、機械に対していつも同じ姿勢を保っている必要があるんだよ。左右対称どの角度も同じ。熟練の技を持っている人が指導しないと安物さえできないね。」

 

最先端の半導体工場に納める部品を造っているのは、下町の町工場。

社長は工業大学出身、ですが、部品は造れないよ、、、と笑って言います。

精巧な部材は、知識があっても造れない。

修練鍛錬、身体の訓練があってできあがるものだというのです。

 

ただし、こと商売になると話は別。

技術は高度であればあるほどイイというものではなくて、用が足りればいい。

お値段は、安ければイイ

納期は、すぐがイイ。

 

「だから、イイ技術者は、社長にならなくて、オレみたいな駄ものが社長になるってワケだよ。」と周りを笑わせます。

 

が、本当は組み立て手順、取り付け時間に関しては、きっかり厳密です。

新しい基盤設計図がくるたびに、どの手順で進めるべきか、何度も自分で試作して行程を決めていきます。一つ一つの部材取り付けにかかる時間も計っていきます。

全てストップウォッチで計測です。

 

技術者であっても、勝手気ままに自分の好きなように部品を造ると、使いものにならないものを造ってしまう人が出てきます。

基盤につけた部品の高さは、どの部品も、同じ高さになっている必要があります。

 

製造機械の一部に取り付けられる部品で考えると、数台の製造機械によって大きさが違うわけにはいきません。取り付けができません。

工場のラインに付帯する基盤部品は、全て同じ大きさ性能でなければ、ラインは動きません。一個でも千個でも同じ性能が必要なのです。

一個の注文をいい加減に造ると、次回の注文はいい加減と同じに作る事になります。

 

いつの注文でも同じ水準を保つ。

形状

性能

品質

 

それには、同じ手順同じ時間が大事なのだ。と社長は言います。

部材の取り付け順番は、その通りにすれば、効率よく取り付けられる順番です。

ハンダ付けや配線は、ほぼ時間通りにならないときは、ハンダの温度や配線ミス接着ポイントのずれなど性能に問題がある製品になっているのです。

もちろん形状にも当然問題が出てきます。

 

時間を計っているのには、もう一つの理由があります。

それは、納期です。

納期は「特別な技術のないオレの会社では一番のセールスポイント」

 

注文主からすれば、ほしいと思ったときにすぐ手に入ることが一番嬉しい。

高度な技術で、他のところではできない製品であれば、それが強みです。

でも、当社は汎用品にちょっとプラスオン

 

いったいいつまでに何個製作できるか?

注文する方は、この日程がほしい情報です。

注文をもらってすぐにほぼこの日程でと答え、他社よりも速く、しかも確実に納品。

 

相手がほしい情報を的確に提供できるから、コンスタントな受注が可能になります。

 

しかし、わざわざ社長がすることでも?

技術者にこの段取り手順造りや時間計測をしてもらい、それを指示すればいいのでは?

 

「技術者は、プライドにかけて速くやろうと手順を考える。一個ならそれでもいいけれど、数ものは、どの人が作業をしても同じにできあがる手順書が必要だ。」

「もう一つ、技術者は、もっといいものって考えちゃうのね。高度化が必要なくて言えば、精度が低くても用が足りればいいから、引き算ができないんだ。」

 

引き算をすれば、安く速くできあがる。

 

段取りは、儲けをひねり出す大事なポイントです。

社長は、この段取り手順を写真と文書で手順書に残しています。

PCにこれを入力しているのは、定年退職した高齢者の一人です。

手順もわかり、写真のツボも心得て、手抜きのポイントも分かる大事な助っ人。

大量生産で儲けはだせないけれど、少量生産段取り上手で儲けを出す町工場です。