代表野口_黒バック 「今週の一言(いちげん)」第32話社長さん、その客単価の上昇に、合理性がありますか?

「とにかく目標の売上に到達するには、客単価を上げること。全員でそう信じてやってきました。振り返ってみると、客単価をあげたお客様は、短期間で消えていくお客様ですね。内部営業で作った単価の高いお客様が抜けるとまた数ヶ月は、売上の低迷になっている。いたちごっこですね。」

 

健康施設関連事業を行っているA社では、店舗ごとの売上目標と、利用者数目標を立てています。業績向上には、予実管理が必要だと考えて、予算書を造っています。

 

さて、その予算書を見せていただきました。

予算書は、4月~翌年3月までの一年予算です。

利用者数の予算は、4月・32名、5月・32名、6月・33名、7月・36名…3月・36名。

それぞれの事業所に応じて数字は違っているのですが、傾向は右肩上がり。

 

売上目標も同じように、右肩上がりです。

理由は、「単価が一定ですので、人数のかけ算でこの数字になります。」

 

予算達成のカギは、利用者数の増加をどのように図るか?ですね。と水を向けると

社長さんは、こう答えました。

「それが、所長達は、営業しようとしないのです。店舗の周りに出て行かない。利用者の世話にとにかく忙しい、手が足りない。人を増やしてくれ。の一点張りなんです。」

 

医療介護関連の事業に就業する職員は、他利の精神の人材が多くいます。

利用者のため、その家族のため、優しく手をさしのべたい。

目の前の困難を抱えた人たちに、どうやって援助していくか?

 

もちろん、リハビリの効果を上げて、より自立した生活の援助が事業の目的です。

高齢者が増加する時代に、より自立した生活の援助ができる施設の運営は、社会の要望・期待が大きい事業です。

ただし、国家予算とリンクしてその客単価は、下がる一方です。

 

事業継続を目指す社長さんは、利用者数は右肩あがりを目指しています。

店舗ごとの売上を毎月一覧表にして、予算と比較しています。

見ると、売上予算はそこそこ確保しているのに、利用者数は伸びるどこか低迷です。

 

「この利用者数は、昨年の実数ですか?それとも、季節変動の数字でしょうか?」

「いえ、所長達が予算として出してくる数字です。」

 

所長達は、社長さんが、人材の確保にも事業所の新設にも努力していることを充分に理解しています。

心優しく、営業が嫌いな人たちなので、利用者数の欄は、社長の意向をそのまま書いているだけ、だけど、苦手な新規営業の施策はしたくはないのが本音です。

 

でも、売上はあげたい!

売上アップは、給与も賞与も社長の評価も上がります。

そこで、短期的に利用回数を増やせる顧客にアプローチをします。

たくさんお世話・サービスを受けたい人に、商品の提供があれば、当然契約します。

客単価が上がり、売上は、伸びます。

 

単に売上に結びつくだけでなく、職員にとっても、自分たちのサービスや心遣いを喜んでいただける利用者は、嬉しい存在です。

痛みや体の不都合がある、不機嫌な人たちを相手にする仕事です。

そこに感謝の言葉をかけてくれる親しい顧客は本当に嬉しい存在なのです。

 

反対にこの接し方は、デメリットがあります。

自分たちがこの施設を、造っているとばかりに横柄な口調になる顧客がでます。

週に5日、毎日利用する顧客は、重度の障害を持っている方です。病院へ舞い戻ること、利用できなくなる事由が出てきます。

ケアを行う職員の人数や設備が必要です。料金も高いけれど、経費もかかります。

 

週の利用回数は、少ないけれど、長期にゆっくりと利用してくれている顧客、一度足が遠のいてしまった顧客には、アプローチがゆきとどきません。

施設の中では、週に2回以下の利用者数が多くいるのに、この顧客数が増えていきません。全体の人数・分母が増えなければ、結果、施設はじり貧になります。

 

「一度契約したら、どのくらいの間、続きますか?その間売上がたちますよね?」

例えば、新規に一人のお客様が、週に2回利用して5年通ってくれたら、

(あくまでも、たらればですが)10000円×2回×52週×5年=520万円

 

「…、一週間の利用件数を埋めることしか、考えていなかった。」

 

普段、職員さんとの会話は、「一週間の利用日数」で、お客様を振り分けます。

一週間を埋めようと思うから、視点は短期になります。

5日の利用者を増やしたくなります。

 

長期的視点にたてば、週の利用回数が少ない契約であっても、毎月毎年継続して、契約期間が伸びてゆけば、これから長い間お客様との絆になると理解できます。

 

ゆっくり利用していただくことで、利用者ご本人にとっても、ご家族にとっても、施設にとっても、利益があることは、望ましいことです。

 

「宿題ばっかり、もらいました。」社長さんは笑っています。

 

お客様をしっかり見る。

それには、お客様を数字に落としていただくことが肝心です。

地域にいる高齢者の数・ケアマネージャー事業所数・当社顧客の利用回数ごと・契約期間と累計売上、その人数、……。

 

これらの数字はすぐに売上に結びつくだけでなく自社がお客様との絆を深めていることも教えてくれます。

長期的に客単価を上げることは、施設としての高度化があって実現します。

契約期間が短くなれば、それはお客様に対応していない問題があることを教えてくれます。そして、数字の意味を、従業員に伝える事が、社長さんの役目です。

 

「たらし込むしかないな~。」

その通りです。社長さんの理想に近づく数字を職員さんの耳元でささやいて下さい

 

どんな事業所を造りたいのか?イイ事業所とはどんな数字なのか?

主軸に据える自社の優良顧客を、数字に置き換える

ここから自社優良顧客マーケティングが、始まります。